「毎日1分間片足立ちをするだけで53分間ウォーキングしたのと同じ効果がある」のは本当か?

2021年02月25日、以下の記事に記載されていた一節が一人歩きして、「1分の片足立ちで53分のウォーキングと同じ効果がある」という健康法が話題になりました。

毎日1分間片足立ちをするだけで、53分間ウォーキングしたのと同じ効果があります

いとうまい子「アイドルだった私が遺伝子の研究者になるなんて」(婦人公論.jp)

本当にそうだとしたら、毎日の運動が楽になるだろうなと思う一方、どう考えても眉唾モノだろうという直感が働いたので、ちょっとばかり調べてみました。
まず根拠となる論説を探してみると、どの記事も「2006年の厚生労働省の記事」を参照しているようでした。

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(※リンク先PDF)

開眼片足立ち
・片足を前方に5cm程持ち上げる
・1分間×左右1回を一日3セット
・1分間片足立ち訓練は約53分間歩行に相当
(厚生労働省2006.8.26記事 阪本桂三 整形外科学)

※資料P.26より転載

どうやら、阪本桂三という先生が提唱したのではないかということが見えてきました。
ここで、本当なら原文にあたるべきなんでしょうけれど、うまいことアクセスできなかったので、阪本先生の論文を引用されている博士論文から転載します。
(調べたあとに分かったんですが、お名前は「阪本桂”造”」が正しいようです。厚生労働省の記事で誤記があったのか、どの引用記事でも間違って「桂”三”」になっていました……)

第2章 先行研究 第2節 ダイナミックフラミンゴ療法

Sakamoto et al. (1999)は(中略)片脚立位時に大腿骨近位部にかかる負荷は両脚立位時の約2.75倍であるというPawelsの理論を基に DF 療法の理論的背景を報告している。そして、高齢者の 1 分間の開眼片脚立位で得られる大腿骨骨頭に加わる力積量は、53.3分間の両脚歩行で得られる力積量に匹敵すると述べている。

博士論文 片脚立位時の重心動揺量および下肢筋活動量

ざっくり要約すると、
「高齢者」の「10cm足を浮かせる片脚立ち1分」が「太もも付け根あたりに与える負荷量」が、「53分のウォーキングの負荷と同じ」
と読めます。
これが伝言ゲームによって「1分間の片脚立ちが53分のウォーキングと同じ運動量」になってしまった、というのが結論なのかと思います。

伝言ミスの原因はおそらく『2006年の厚労省の記事』なのかなーと邪推してしまいますが、そちらを見つけられなかったので今回はここまでにしておきます。

以上、どうか間違った情報に踊らされませんよう。
そして、楽してダイエットなんてありませんので地道に頑張りましょう。

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