例大祭13新刊案内

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秘封で夢十夜というテーマはでどなたか書いてくれないかとずっと願っていたのですが、
とうとう待ちきれずに自分で書いてしまいました。

雰囲気の模倣だけに留まらないよう、自身の思いをプラスしたものとして
仕上がっていればいいなと思います。

没後100周年というのは後から知ったことでしたが、その記念の節目に
関われたことは幸甚であり、漱石先生の功績を称える一環として
多少なりとも寄与できれば光栄の極みです。
 
 
<5/6 20:15 長すぎる追記>
宣伝のため、まずは本家「夢十夜」の魅力を伝えるところから始めるべきかと思ったすが、ちょっと長くなりすぎたのでTwitterじゃなくてここに書くことにしました。

■夢十夜について
「こんな夢を見た。」という書き出しが有名ですが、実は十編のうち4編にしか使われていません。その基準は?どうして1,2,3,5夜だけ?など、謎が謎を呼びます。

「夢十夜」は、1908年(明治四十一年)朝日新聞に十日間、連載される形で発表されました。漱石先生は前年(1907年)に朝日新聞社に入社して虞美人草を執筆し、作家としての知名度は既に高まっていた時期のことです。
今でこそ、夢の解釈を巡って研究対象とされる作品ではありますが、当時はそうでもなく、どちらかといえば幻想・怪談小説の類として評価されていたようです。そもそも、夢に関する研究というのは意外と歴史が浅く、科学に取り上げられるようになったのは、1953年にレム睡眠という概念が発表されてからだったと思われます。
別の面、心理学の方面では、1900年にフロイトが「夢判断」を発表しているものの、まだ科学的なものとは遠く、とりわけ1907年の日本で膾炙していたとは思えません。

そういうわけで、1907年当時は多分、夢そのものを研究対象としていたとは言えないと断じてよいと思います。

では、近年になって「夢十夜」がどう分析されるようになったかといえば、「作品の要素を取り出して分析する」「時代背景や筆者の境遇を元に推察する」という感じに二分できいます。
前者はちょっと専門的すぎるので今回は触れず、後者の例など紹介したいと思います。

・第三夜
これは、十編の中で唯一、明確なモチーフが見つかっている話です。
夢十夜執筆の四年前(1938年)、知人宛の手紙(書簡集収録)に、三夜と同じ内容の夢を見たと綴られており、その体験を元に書かれたのはほぼ疑いようがありません。

・第十夜
中盤の豚の大群の下りは「ガダラの豚の奇跡」という絵画、あるいは大元の「マタイによる福音書第8章28-34節」を下絵にしていると見られています。

・第六夜、第七夜
この二編は、西洋文明を安易に取り入れた明治政府を批判した話だという見方が一般的です。

上記例のように、「夢十夜」は単なる幻想文学として読むだけではなく、背景を読み取ることで深みを覗き楽しむことができる作品だと、私は思います。

■改めて:宣伝
ここからが本題ですが……
今回の新刊「夢重夜」は、原作の魅力・不気味さ・謎をできるだけ継承しつつ、ここしばらく(主に鈴奈庵により)明らかになりつつある幻想郷の暗部に足を踏み入れてみようとした作品になっています。
もしよければ、そこらへんも踏まえて読んで頂ければうれしいです。
もちろん、「前提知識として読んでおけ」とか、「夢十夜を知っていないと面白くない」というわけではなく、単体でも読めるものだと思っておりますので、とりあえずサンプル(pdf)など読んでみて、あるいは会場でお手にとって頂ければそれに勝る幸福はございません。

例大祭13、て02b「傾き屋」でお待ちしております。
どうぞよろしくお願いします。

<参考リンク:青空文庫>
夏目漱石 夢十夜

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