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NieR Reincarnation 非公式サーバー問題を巡る分断について

先に言っておくと、この記事を読んでも結論は書いていません。
ただ、簡単に判断できる問題ではないということ、それゆえ気軽に他者を非難するべきでない、ということを説明するための記事です。

#概要

何の話なのか端的に言うと、スペイン語圏の某アカウントから、「NieR Reincarnation」の非公式プライベートサーバーを公開したアナウンスが投稿され、それに対して日本語圏のアカウントが「海賊版を作った」と非難したことに端を発する揉め事です。

「NieR Reincarnation」は2024年にサービス終了となったスクエニ製スマホ用ゲームです。
ネットワークを介して遊ぶゲームのため、手元にゲームデータがあってもサーバー側が動いていないと遊ぶことはできません。

そこで、プライベートサーバーを立て、ネットワーク側の機能を再現してクライアント側と通信することで、「手元にあるゲームデータを起動して、それまで動いていたゲームの一部を部分的に遊べるようにした」となります。
ポイントとなるのは、ゲームデータ自体は各ユーザーが手元に残してあるものを使うため、公式データの二次配布は行っていないという点です。サービス終了して起動すらできなくなったゲームを起動して、メニュー画面やBGMを見聞きできるようにした、という感じでしょうか。

それに対して「海賊版だ」と非難した人と、「いやどこが海賊版なんだ」と反論する人が現われ収集がつかなくなり、次第に非難の対象は当事者のみならずスペイン国民、や海外の人間を一括りにして非難する人も現われました。

「スペインという国は著作権意識が低い」と指摘する人もいましたが、本当にそうでしょうか。
声の大きい人のPostだけ見て、大多数の普通の人の声まで確かめたのでしょうか。

また、日本と違って欧州ではサービス終了したゲームを保存しようとする運動「Stop Killing Games」が盛んであったり、以前から今回と同じようなことをして黙認されてきた事例があり、一概に著作権意識が低いとは言い切れないと思います。そういった背景をまずは知った上で判断してほしいと思うので、以下長々と解説します。

ろくに情報を集めもしないで人種、国籍などの集団をまとめて非難するようなことはあってはなりません。正しい情報を身につけて、冷静に判断してもらいたいと思います。

#大本となる発言

・火元ツイート

・回ってきた批判ツイート(一例)

#何が問題か

この揉め事でどのあたりが問題なのかというと、おおまかに分けて以下の2点になると思います。

1.技術的、法的知識のないまま明後日の議論をしている
2.特定集団にレッテルを貼り、社会的分断が加速している

これを念頭に置いて読んでください。

#背景、前提知識

今回の件と似た事例は、過去のサービス終了ゲームでも複数見られます。中には、企業側が長期間黙認していたケースもあります。
日本では同人誌文化が一定程度許容されてきた背景があるように、欧米圏にも「グレーゾーンが放置される空気」が存在する側面もあるかもしれません。
それを踏まえると、「特定の国は著作権意識が低い」と一括りに断じるには、十分な証拠が不足していると言えます。
先述の「Stop Killing Games」に100万以上の署名が集まっていることからも、違法のまま遊ぶことを由としない人が少なくないことも分かると思います。

日本国内でも、似たような事例は存在します。
海外を簡単に批判してしまうと、二重基準(ダブルスタンダード)になってしまう可能性があります。本件を問題視するのであれば、日本も例外ではないという意識を持つことが大切です。国内でのプライベートサーバー事例としては、サービス起動中のゲームに対してエミュレータサーバを建てて告訴された事件もあります。

#本件の事案は海賊版なのか?

A. わかりません。海賊版の定義次第です。
少なくとも「コピーされた完成品をそのまま公開・配布している」といったケースとは異なります。技術的に何が行われているのか、詳しい解説を丁寧に見てから判断する必要があるでしょう。なお、「海賊版」という言葉自体が、Xの自動翻訳によって日本語に置き換えられたもので、現地では少し異なるニュアンスで使われている点にも注意が必要です。

#著作権法違反なのか

A. わかりません。
明確な答えを得るには、現地の法律や関連する判例を丁寧に調べる必要があります。
著作権法に関する判断は、国内の事例を見ても一筋縄ではいきません。過去の判例は複雑で多様な解釈が存在します。
興味がある方は、著作権法に詳しい書籍を参考にされることをおすすめします。
ついこないだ、国内の著作権絡みの判例を集めた「法律時報 2026年3月号」が出版されて話題になっていました。私も買いましたがまだ読んでいません。

#日本と海外各国で著作権意識に差があるのか

A. わかりません。
とにかく、感情的に決めつけるのは避けたいところです。
日本でも、一昔前にはマジコンが社会問題になったり、ニコニコ動画が無断転載の場として使われたり、漫画村が大きな議論を呼んだりした時期がありました。海外と比べて「特に模範的だった」とは言い切れない面があります。ひどいことに、著作権問題を語る人の中には「マンガの無断転載コマ」を使ってレスポンスを返している人もいて、頭を抱えます。
日本と他国を定量的に比較した信頼できるデータがある場合は、それを基に議論すればよいでしょう。そうでない場合、自国の過去を棚に上げて批判するのは、公平性を欠いた発言になりやすい点に留意する必要があります。

#本件に潜む根本的問題

海賊版や著作権法違反といった議論は、この問題の表層的な部分に過ぎません。ここに潜むより本質的な課題は、文化や価値観の違いを巡る分断と、軽率な一般化にあると言えます。
たとえば、今回の出来事や、受動的に目にした投稿だけを基に善悪を判断し、特定の国や地域の人々全体にレッテルを貼ってしまう行為は、結果として人々の対立を深め、誤った偏見を生みやすいものです。
また、技術的・法的知識が十分でない状況で、無根拠に結論を出してしまうのは、浅い判断となりがちです。
さらに、現在のX(旧Twitter)では、怒りや争いを引き起こしやすい内容が優先的に表示されるアルゴリズムが働いており、社会全体の分断を助長しやすい構造になっています。
加えて、2026年4月からGrokによる自動翻訳がデフォルトで広く展開された影響で、異なる言語圏の投稿が容易に飛び交うようになりましたが、翻訳の精度やニュアンスのずれにより、誤解がさらに加速する懸念もあります。

#最後に:望むこと

まずは、軽い気持ちで他者を悪く言う習慣を、少しずつやめていけたらと思います。
確かな根拠がある場合は別として、受動的に流れてきた投稿を十分に検証せずに冷笑的にコメントしたり、簡単に意見を述べるのは、建設的な議論を損なう行為です。
もし周囲の人が何も指摘してくれなくなったら、それは自分の周りがエコーチェンバー(同じ意見ばかりが反響する環境)になっている可能性があります。大人になるほど、誰かがわざわざ注意してくれる機会は減っていきます。自分自身で立ち止まって考える習慣を身につけることが今後一層大事になると思います。

次に、一つの事案だけで、その人が属する国や集団全体を非難しないようにしましょう。
繰り返しになりますが、そうした「〜な人たちは皆〜だ」という主語の大きな決めつけは、レッテル貼りにつながりやすく、結果として人々の分断を深めてしまいます。
また、怒りや非難を短絡的に表明する前に、問題の背景や一次情報を自分なりに調べてみる、または信頼できるまとめを待ってみる。そうした一手間が、誤解による混乱や怒りの連鎖を防ぐことにつながります。

ここまで読んでくださった方は、おそらくすでにそうした意識をお持ちだと思います。
どうか、これからも互いの違いを尊重しながら、穏やかに過ごしていきましょう。

#参考:技術的側面からの解説(順不同)

私も理解できてるとは言えませんが、判断基準になりそうな解説を書いてくださっている方がたくさんいますので順不同で記載させていただきます。


 

 

超かぐや姫!感想

今更の感想。

予告が出たときから楽しみにしていてネトフリで初日に鑑賞してガイドブックも買ったし映画館にも見に行った人間の言うことなので多少の色眼鏡はご容赦ください。

# 振り回されるのが楽しい

突然降ってきて育ってはしゃいで落ち着く間もなく彩葉を振り回しているかぐやが楽しすぎて好き。
かぐや、動きすべてがいちいち楽しくて画面に映っているだけで元気が出る。
こんどHoloModelsが出るというのでもしかしたら初めて買っちゃうかもしれない。それくらい全ての動作が好き。

#月と海

「かぐや姫」というわりに、月じゃなく海寄りのモチーフがたくさん出てきたような気がする。
ヤチヨは見るからに乙姫だし手持ちはメンダコだしツクヨミは名前のわりにどちらかといえば竜宮城っぽさを感じたし、ついでにかぐやの境遇は浦島某のそれである。
このあたり教養がないのでどうしてそうなってるのか知りたい。調べます。調べるのは大好きです。

#八千年の航路

かぐやが過去から現在までに出会ってきた人達との挿話、あれ全部すごくよかったですよね。
ネトフリの字幕を使うと名前が出ると聞いて見直したんですが、出てきた順に
神功皇后、権中納言敦忠、淀殿、吉原の花魁、明治時代の文豪、花売りの少女、CIAの男性となっていました。
この人達の話だけで映画作れそうなくらい想像力をかき立てられるくらい好きなんですが、
それはFUSHIが彼らと出会って縁を結んでも何も出来ないまま別れを告げてきたこととセットになっていて、自分のエゴを貫くために何を選んできたのかの歴史が積み重なってるところが愛おしくてたまらんのです。
ヤチヨの笑顔に寂しさが宿っている背景をこんなに見せられたら、笑ってるところみるだけで泣いちゃうようになってしまいました。
このシーンに入る前、「ヤチヨは さっき久しぶりに本当にうれしそうだったんだ」って台詞があるんですけどね、その笑顔が彩葉との再会のときでもなくライブのときでもなく、ここなんだなと思うといろいろ感じ入るものがあります。

#rayのMV①

実質本編ですよこれ。ネタではなく。

「月に帰ってめでたしめでたし」と竹取物語の〆を彩葉が語っていましたが、それは正しくありません。
現存する竹取物語のラストは、姫が戻ったあとに残された側の話がエピローグとして描かれています。

かの奉れる不死の藥の壺に、御文具して御使に賜はす。勅使には、調の岩笠といふ人を召して、駿河の國にあなる山の頂に持て行くべきよし仰せ給ふ。嶺にてすべきやう教へさせ給ふ。御文不死の藥の壺竝べて、火をつけてもやすべきよし仰せ給ふ。そのよし承りて、兵士ども數多具して山へ登りけるよりなむ、その山をばふじの山とは名づけける。その煙、未だ雲の中へ立ち昇るとぞいひ傳へたる。
https://jti.lib.virginia.edu/japanese/taketori/AnoTake.html

姫から贈られた不死の薬、これを帝は「調岩笠(つきのいはかさ)」に命じて駿河の国にある山の頂きで燃やさせます。
これがrayのMV冒頭のシーンと繋がっていることは疑いようもなく、「不死の薬を捨てる」=「かぐやのバックアップ機構であるタケノコを捨てることで、代わりの効かない唯一の個体となる」ことを示しています。
MV(2:10)で彩葉が『私はかぐやを本当の意味で人間に』とメールを書いているシーンがさし込まれています。その直前の文章には『私の真意を率直に述べさせていただ(※画面が切れてここまでしか読めない)』とあることから、タケノコの廃棄について独断ではなく研究室(?)の合意を取ろうとしていることが読み解けます。

こんな重要なシーンをどうして本編に入れなかったのか!
作品のテーマのひとつに「ハッピーエンドとは何か」があると思っているんですが、その視点から見て、ここまで入れるかどうかの葛藤があったのかもしれませんし、ラストの展開としてすっきりしないという判断だったのかもしれません。
ただ、やはりテーマ的に考えてこのMVも本編の一部であるよなと強く思ってしまいます。

Tipsですが、山下清悟監督のMVへのコメントに「※MVのとあるシーンの補足ですが専門知識を持った彩葉が許可を取り近未来技術で岩盤を溶解化して掘っているので現代の皆さんは絶対に真似しちゃ駄目ですよ!」とあります。コンプライアンスの徹底された作品。

#ハッピーエンドとは何か

作品のテーマのひとつに「ハッピーエンドとは何か」があると勝手に信じ込んでいるんですが、じゃあハッピーエンドの定義って何だという話です。
人間、生きていれば山あり谷ありですから、どこかで切り取るか、あるいは命が潰える瞬間に判断するかしかないと思います。
本作の後半イベントを並べると、

①アパートでタケノコと再会、真実を知ってかぐヤチヨと再会
②研究者の道を進み、人間としての再会(本編エンド)
③タケノコ廃棄(ray MV)

といった感じですが、なんなら①の時点で終わってもわりかしハッピーなのでは?とも考えられます。
ただ、それを本作は否定していて、①では欠けているものがあります。それは、「同じ時間を生きられる」という条件です。
感情的には再会を果たしていますが、片や人間、かたや永遠の命を持つ存在で、その非対称性は悲しみをはらんでいることが、かぐやの出会ってきた人達との思い出としてすでに語られています。だからこそ②に進んで「終わりを共有できる存在」になることが、本作におけるハッピーエンドの条件なのだと考えました。
捻くれた視点から見ると「ふたりで永遠を生きればいいじゃん」とも考えましたが、そもそもかぐやが人間の人生に意味を見出したことから始まった作品としてそれはありえないでしょう。

よって、有限、かつ可能性が開かれた状態であればそれはいつでもハッピーエンドなんだよ!と個人的に結論づけて一旦この話を締めたいと思います。

#rayのMV②

再び話を戻しますが……
自分はrayという曲が好きで好きで、Bumpのライブにはじめて行ったのもこの曲ができた頃でした。
なもんで、前情報なしで鑑賞してエンディングに入った瞬間にイントロが流れてきたとき叫んじゃいました。
この曲は、明るい曲調と裏腹に喪失と再起を軽やかに歌っています。
では、その想いは作中の誰に重ねられるか。私は、ヤチヨだと思って聴いていました。

物語はハッピーエンドで終わり、かぐや(ヤチヨ)は不死の代わりに肉体を手に入れ、現実世界で生きていけるようになりました。
作中ラストの描写では、いろPとかぐやが並んだ写真がたくさん出てきます。復活ライブも二人でやっているように見えました。
そんなところに、まさかの三人ライブシーンですよ。
いやもちろん以前の時空という可能性もなくはないですけど、このMVは全体的に未来時空の話を描いてるので、それはないかなと思います。

あのヤチヨは誰なのか。
魂はかぐやに移っているのは確かとして、ならばアバターとしてのNPC的存在かというと、本作でそんなことするとは思えません。
であれば、(これは直感的推論であり根拠はまったくないのですが)あのヤチヨは、かぐやが人間になった瞬間に残った何かから生まれた、純粋な存在としてのヤチヨだったりしないかな、と思ってしまいました。ヤチヨを構成していたものの中で最も大切な「彩葉を好きな気持ち」をかぐやにあげて、ツクヨミを愛する存在としてのヤチヨがあの瞬間に生まれ、そして新しい関係を三人で築いていったならいいなと願望マシマシで思っちゃいました。そうであってくれ。

#統括

ノリと勢いでバッドエンドをハッピーエンドに変えてやったぜ!という意味での「超」が清清しい作品でした。
あえて語らない余白がたっぷり残っていたり、ツクヨミの世界観など、キャラクターの魅力以外にもたくさんの見所があって何度も何度も見返したくなる素晴らしい作品だと思います。
幸い、まだ劇場公開が続いたりクラファンその他の展開も多々ありそうですし、しばらくは楽しめそうです。2026年の初めから良い作品に出会えて幸いでした。

以上、感想まで。

 

 

余談

・チネチッタのLIVE ZOUNDで観てきました。
壁ドンとかアパートの生活音が後ろの方からリアルに聞こえてきてびっくりして面白かったです。

クラファン

「グッズ化してほしいな~」と思っていたヤチヨ神棚がここで出てしまった。しかも後日販売予定なしということで申し込んでしまいました。(まあマイナーチェンジして出すかもしれないけど後悔はしないのでOK)
ちょっと気になったのは、ここのプラットフォームって目標額の提示なしで達成率だけ提示してるけど景表法とか消費者契約法とかそこらへん問題ないんでしょうかね。門外漢なので見当外れなこと言ってるかもしれないし、入金してから言うなって話だけど少し気になったのでここに書いておく。

 

響け!ユーフォニアム短編集「みんなの話」感想(主に黒江真由関連)

※響け!ユーフォニアム短編集「みんなの話」(24年6月発売)のネタバレ全開です。
※本記事で扱うのは原作小説時空です。アニメの話はしませんので悪しからず。

夏コミの新刊でユーフォ新世代二次創作を書いていた関係上、一ヶ月近く読まずに封印してきた短編集をようやく読みました(隙あらば宣伝)

以下本文です。


↓本作では黒江真由の人物像について、国語の読解問題に使ってもいいくらいロジカルに書かれていました。
本編(=ユーフォ最終楽章)ではまったく語られなかった黒江の心情が語られているので、犯人視点のミステリィ小説を読んでいるような気分になりました。まさにユーフォ3期解答編。
ここでは、黒江の描写について詳しく解説しつつ感想を挟んでいきたいと思います。

Q1.黒江の目的は?

「同窓会に呼ばれること」
そのために知人との人間関係で波風を立てず、相手の希望に沿うことが黒江の目的であり、
そして、その目的を達成するために「賞味期限のない友人を作ること」が行動原理ということでした。

では、黄前久美子の「本気で勝負して」という希望がどうして叶えられなかったのかというと、
『本気で勝負したら自分が勝ってしまう可能性があり、勝ってしまうと波風が立つのは避けられない』というリスクがあってのことかなと推測しました。もし真由が、「勝負してもいいよ」と言いつつバレない程度の手加減をするような腹芸ができる人間だったら何の波乱も起きなかったでしょうね。

Q2.『賞味期限のない友人』はどうやって作るか?
黒江の行動原理である「波風を立てず」は、おそらく打率は低いと思われます。実際、さんざん尽くした瑠璃葉さんも期限切れになっていますし。
こういう人間のことを、某氏のことばを借りると
「気になって近づくくせに、傷つくのも傷つけるのも怖いから なあなあにして安全な場所から見守る」ひとなのかなって思いました。

これに対する久美子は、某氏の言葉をきっかけにしたかどうかはさておき、相手の懐に潜り込んで時に傷つきときに傷つけながらも多くの人と親交を深めていきます。この姿勢こそ、本作が表している『賞味期限のない友人』の作り方じゃないかなと思うのです。

これはただの持論ですが、
衝突や対立を経て相手を知り認め合う、この過程にこそ意味があって、そのあと結果として関係性が深まることはあってもそれを目的にしたらうまくいかなと思うんですよね。
黒江は相手を理解するために、言いたいことがあったら何でも言ってね、という台詞を度々使います。これは、黒江自身も本当のことを全部口にする性格であり、だからみんなもそうに違いない、という思想です。
相手が言ったことだけを信じる姿勢は、理解を深めることができません。いつまで経っても表層的なところしか分かり合えません。
奏が言及していたのもこれで、絶対に相手の裏を読もうとしない、「読めない」のではなく「読まない」というのは頑固で分からず屋の考えです。
本作では、その思想が生まれた理由として幼少期に親から教えられたからと書かれていますが、そのあとの人格形成において転勤族だったことや欲しいものは何でも与えられてきたという環境も関係しているはずです。

転勤族なので、サークルクラッシャーでコミュニティを崩壊させてもその後の経過を見ずに済むというのは割とひどい話ですが、本人にしても反省の機会がなくなるという意味でよくなかったんじゃないかなと思います。

Q3.久石奏は何に負けたのか?

黒江のことを勝手にラスボス扱いして一人相撲して勝手に敗北宣言しただけでは……?
というのはあまりにも可哀想なのでちゃんと考えてみます。

「(黒江のことを)理解したくない」というのが第一印象だった久石奏。
これ自体は、黒江の思考が読めずにこわいというよりは久美子の地位を揺るがす存在だと認めなくないという意味にも取れるので保留します。

黒江を攻略しようとする久石ですが、彼女の対人戦略って基本的に相手を怒らせたり慌てさせたりして自滅させるパターンがほとんどなんですよね。
怒らせることで本音を暴き、優位に立つ。
それなのに、どれだけ挑発してもなびかない黒江は天敵であり、それどころか久石のイヤミを本音として信じようとする(前段参照)黒江は、相性が最悪です。

久石VS黒江の戦いとは、そういう嘘と本音のぶつかりあいという構造になっていて、だから『黒江が言っていることを本音と認めざるをえない』ということが久石の敗北であり『完敗です』に繋がってるんじゃないかと考えました。

まあ、どっちみち久石の一人相撲であることに変わりはないのですが……

Q4.黒江真由は、北宇治で無期限の友人を作れるのか?

先程、一生モノの友人を作るためには青春バトルが必要(妙訳)と言いましたが、例外はあります。素の真由と波長があう人間は過去の学校でもいたみたいですし、つばめちゃんみたいな子とは程よくやっていけるでしょう。
また、結果的に一方的敗北を知った久石も、捻くれた舎弟ポジションとして続いていく可能性が出てきました。奏ちゃんって年上の先輩に対してちょろくないですか?夏紀先輩が振り向いてくれないからってまゆかなですか?という気持ちがなくもないですが、この二人は上手くいけば仲の良い関係が築けそうなので、もうちょっと先の時空の話が読みたいです。

Q5.黒江真由とは何だったのか?

→一言で言うと、田中あすかと出会わなかった久美子なんじゃないかと思いました。
真由自身、久美子のカウンターとして、あるいは越えるべき壁としての田中あすか要素がふんだんに盛り込まれたキャラクターです。しかし、開けてみたら全然の別物で、むしろ久美子よりも足りないものが多い子だと気付きました。

真由がほしいもの、実はほとんど久美子が持っているんですよね。
一生ものの友人達も、その他諸々も。
本当は久美子の方が満たされているのに、久美子自身は気付いていない。
かくいう自分も、何度も読んで考えてようやく気付いたくらいです。
それが少し悲しかったです。

黒江真由について言いたいのはこれくらいです。

 

以下は各話についての蛇足感想文です。

 

■1/◯の中身はなんだろな
黒江さんが持ってきたマシュマロとハチミツにそこはかとないあざとさを感じる。

>奏ちゃんのクリームチーズのたこ焼き、はちみつとすっごく合うね
あざとい

■2/気がある気がする
>秀一から見ても、黒江は好感の持てる人間だった
しゅうまゆポイント入りました。

ところで、博多通りもんをくれたパーカスのOBってナックル先輩?他に男子先輩が思い浮かばないけど原作時空のキャラクター把握してないのでわからないです

■3/ランチタイムにて
・黄檗にあるパン屋(たま木亭)大人気ですよね。
・黒江さんのお弁当、おかず4品はすごいなと弁当ユーザーの感想。
・写真キャンセラー真由を撮影する緑先輩さすがです

■4/四人は幼馴染
ユーフォ新展開、久石世代の話はもちろん見たいのですが、物語として眺めたいという意味ではこっちの四人が気になるんですよね。

■幕間・アジタート
小日向部長候補に関する言及ありがたい。覚醒小日向のスパルタDMが見たかった。

>真由は当然のように奏の隣に腰かけた
これはちかおくんも勘違いするわ
(野郎相手にはやってないだろうけど度合いは違えど同じようなことしてるよね)

>奏ちゃんさ、私のことどう思ってる?
これはちかおくんも勘違いするわ

>みんなと仲良くするのが夢物語だと(知っている)
原作時空の黒江、転勤族のために価値観が醸成されてこなかった歪みがここで言語化されました。

■5/ドライブ
残り100ページくらいこの話が続くと思ってたのに予告編だけで終わったみたいな物足りなさ。
むしろTLの共同幻想で無限に読んだ既視感しかない。
とりあえず今年の夏は和歌山に向かうふぉろわーが多そう。

■6/彼岸花の亡霊
いなくなった人の声が徐々に再現できなくなるのと、悲しみが過去になるのは同じなんじゃないかと思ってます。
脳内でこだまする声って不思議ですよね。音がないのに脳が記憶から再現しようとする仕組み、不思議です。

■7/賞味期限が切れている
黒江真由解答編。
悪意の届かない人間はこわいね、という話。

>あけおめのメッセージが届かなくなると、真由はいつも切なくなる
これ、黒江さん自分から送ってませんね?そういうとこやぞ。

人間関係をリセットして進んできたせいで、サークラしたあとの泥沼を見ずに去っているという最悪のムーブ。

>真由は自分の行動が正しかったと確信した
あーあ。

■幕間・グラーヴェ
行動原理を理解・納得したことで、自分の感情を片付けて比例を詫びる一連の流れ、やや儀礼的とはいえこういうことができるのが久石の魅力であり、幹部に推される説得力になっているのでしっかり描いてもらえたのはうれしかったです。ただ個人的には最後までイヤミを込めて”黒江先輩”呼びしてお互いきゃっきゃするくらいの距離感でも良かったかなと思いますがまあ個人の感想です。

しかしここにきて黒江真由の欲しかった一生ものの友人枠に久石が収まるとは思わなんだよ。
真由かな、あります。

■8/大人の肴
これ、よくある円盤特典に収録されるドラマCDだ。聞きたい。

■9/新・幹部役職会議
副部長とDMは当日のドッキリじゃないんですか?

ドラムメジャー、どうにかして小日向夢が抜擢されないかなと期待していたんですが残念。
やや妄想込みですが、高坂の下で鍛えられてスパルタ2世になった小日向さんが見てみたかったです。
ユーフォとペットという伝統ここに潰える。
美玲さんは、説明されていたとおり実力やカリスマ、舐められない風格など充分な能力があるので納得の人選でした。

 

(以下、保存できずに消えてしまったので気が向いたら追記します……ぐだぐだ……)

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